現場で使われない悪いSOPの共通点
『作業手順書の形骸化に関する実態調査』を行ったところ、以下のようなSOPは現場で使われない可能性が高いです。悪い例としてチェックしておきましょう。
- 文字量が多く読みにくい
- 難しい用語が多用されている
- 現場の実態が反映されていない
- 最新情報が反映されていない
- 標準(ルール)が抽象的
- 存在を知らない/どこにあるか分からない など
現場で使われない悪いSOPが存在すると、業務の非効率化や品質の低下を招く恐れがあります。こういった事態を避けるためにも、次章でご紹介する『わかりやすいSOPを作るポイント』を参考にして、作成を進めましょう。
形骸化しないわかりやすいSOPを作るポイント
形骸化を防ぎ、現場で使われるSOPを整備するためには「標準や手順がシンプルで表現も分かりやすいSOP」を作ることがポイントです。そこでこのようなSOPを作るために必要なコツを6つご紹介します。
カンコツ作業のような暗黙知を手順書に落とし込む場合、他にも必要なコツやポイントがあります。その視点については以下の作成ガイドブックで詳しく解説しているので、併せてご覧ください。記事で読みたい方は、こちらからご覧ください。
前提となる標準(ルール)を見直しする
SOPでは作業手順を流れに沿って記載することは勿論、動き方や基準値などルールを具体的に分かりやすくできないか確認しましょう。
例えばロール台車の運び方を伝える場合、単に「移動時は必ず一段開いてください」とだけ記載されていると、なぜ開かないといけないのか?どこの段を開けばいいのか?背景や対象作業の内容は伝わりません。曖昧な部分があると、そこが将来的な手順不遵守などトラブルの原因となります。
そのため「閉めて運ぶとロールが倒れてケガをします。移動時には必ずロール台車の一番下の段を開いてください」といったように、標準(ルール)を具体的にできないか見直しを図り、守らないと何が起きるのか?誰にでもイメージできるようにすることがコツです。
定期的に内容を更新する
SOPの見直しタイミングとして、手順不遵守による品質不良やケガ発生など、重要度や緊急性が高い問題が発生した際に行うことが鉄則です。まずは問題箇所の記載があるか確認をしましょう。記載があるにも関わらず問題が発生した場合、SOPの内容や表現方法に不備や欠陥があるので改善が必要です。
▼SOP更新の流れと例▼
一方で、重要度や緊急性が低い改善点は「今度でいいか」と、更新の優先度として後回しになりやすいでしょう。細かい改善点が複数蓄積し、手順書へ反映されずに放置されると『現場の実情と手順書の大きな乖離』という形で問題が顕在化します。顕在化するころには現場作業者の気持ちとして、SOPは役立たないという状態になってしまいSOPが形骸化してしまいます。
このような状態を未然に防ぐために、大きな問題が起きていないとしても【3か月に1回】【半年に1回】など、定期的にSOPの内容を見直して更新するようにしましょう。内容だけでなく、表現方法もより分かりやすい言葉選び/フォーマットはないか?考えるきっかけになり、徐々にシンプルで分かりやすいSOPへ近づきます。
手順書の見直しタイミングや具体的な方法を知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
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作業手順書の見直しタイミングは?改訂手順や見直さないリスクを解説
わかりやすい言葉を用いる
SOPは、現場作業者全員が標準作業を理解し、作業手順通りに業務を進めるためにあります。そのためSOPは、配属したての新人であっても理解できる状態を目指しましょう。
SOPを作成するのは、該当作業を知る熟練者であるケースが多いと思います。業務に慣れている方が作る場合、専門用語や社内用語を使用してSOPを記述してしまう場合があります。SOPを見た作業者が言葉の意味合いを理解できない場合【直接聞いた方が早い⇒口頭ベースで内容がバラつく⇒手順不遵守が起きる】という負のサイクルを繰り返すだけでなく、教育者のフォロー工数も発生してしまいます。
SOPをわかりやすく言葉で表現することで理解しやすくなるのは勿論、結果的に教育担当の作業者がフォローする工数も減り教育負荷が減るという効果につながります。
文章だけで説明しようとしない
基本的にSOP=紙/Excelベースの文書であるケースは多く、文章を中心に作成することが多いのではないでしょうか。しかし高度な作業や複雑な作業であればあるほど、文字で伝えるべき情報量が多くなり結果的に文章がわかりにくくなってしまいます。この場合、わかりやすい言葉/単語を用いても限界があります。
そのためヒト/モノ/機械の動きといった、文字化すると文章量が膨れ上がるノウハウは『動画』を活用し、視覚的に見ればわかる状態にすることがオススメです。実際、動きをわかりやすく伝える手段として製造業や物流業、小売業など幅広い領域で、動画マニュアルが注目を集め活用され始めています。
動画マニュアルが注目を集めている背景については、別記事内「動画マニュアルの導入が進む背景とおすすめの業界や会社」で詳しく解説しています。SOPの動画化がオススメな理由について、より詳しく知りたい方は次の章をご覧ください。
若手と熟練者の意見を両方反映させる
若手と熟練者の意見を両方反映させることで、幅広い視点と経験を統合でき、実務でより使われやすくなります。
▼それぞれの意見を取り入れるメリット▼
若手 |
・新人や未経験者にとってわかりやすい内容になる |
熟練者 |
・豊富な経験から、効率的な手順を知れる |
片方だけの意見のみ参考にしてSOPを作成すると、どちらかが課題としている点を見落としてしまう可能性があります。両者の視点を踏まえて、SOPを作成しましょう。これにより、組織全体の協力体制を促せて、モチベーション向上にもつながります。
導入の成果を測定する
SOPの成果を測定することで、SOPが効果的に機能しているかを確認でき、継続的な改善を図ることが可能です。具体的には、以下のような方法で成果測定を行えます。
- 従業員へSOPの内容の理解度テストを実施
- 生産時間 / 不良品数 / 作業ミス数の測定
- 教育負担の変化をヒアリング など
成果が目に見えることで、現場改善を図れるだけではなく、SOP運用のモチベーションが高まります。好循環を生み出すためにも、導入成果の測定を行いましょう。
後述する『SOPをわかりやすくするには『動画化』がオススメ』でもご紹介する、動画マニュアル作成ツール「tebiki」では、動画によるわかりやすいSOPを作成できるだけではなく、オリジナルテスト&自動採点機能も搭載しています。tebikiの機能や特長をより詳しく知りたい方は、以下からぜひ詳細をご覧ください。
SOPをわかりやすくするには『動画化』がオススメ
SOP作成のポイントやコツでご紹介した通り、SOPに落とし込むような動きが伴うノウハウは『動画』で伝えることがオススメです。SOPの動画化は「わかりやすさ」という点で行うのは勿論、製造現場のペーパーレス化推進を目的に行われているケースもあります。
動画と聞くと『編集が難しいのでは…?』と感じるかもしれませんが、私たちがご提供する動画マニュアル作成ツール「tebiki」は誰でも直感的に動画作成が可能です。実際、編集初心者の方でもtebikiによるSOPの動画化で、従来の手順書より作成工数が1/3まで削減している事例があります。
▼動画マニュアル作成ツール「tebiki」紹介動画▼
SOP作成には「動画」が効果的かつ効率的
ここまでご紹介したように、SOPをわかりやすく誰にでも伝わるように作成するには、手順の詳細な説明や、作業中のポイントなどを細かく記載する必要があります。そのため多大な作成工数が発生するだけでなく、作成者によるSOPそのものの品質がバラつきやすくなるのは否めません。また文字/写真ベースのSOPでは、作業者も動作が伴う内容を三次元的に理解することが難しいです。
そこで「動画」をSOPに使用することで、作業の流れや手順の詳細を視覚的に理解しやすくなり、その分かりやすさから現場でSOPが活用されて結果的に業務標準化につながります。
また、動画を作成することで、必要な情報だけを抽出し、冗長な情報の削減が可能です。そのため、作業者がSOPを見るときの情報の取捨選択が容易になり、教育効率が向上するというメリットにつながります。
より具体的な動画マニュアルの概要や効果、作り方を知りたい方は別記事『つまづかない「動画マニュアル作成手順と18のコツ」』か、以下の動画マニュアル導入ガイドをご覧ください。
動画化でSOP作成工数を紙の1/3にした企業事例
動画を活用することで、SOPの本来の目的や効果を最大限引き出せるようになることをお伝えしてきました。一方で、動画編集に対して抵抗感や難しさを感じている方もいらっしゃると思います。
結論、この不安は「動画マニュアル作成に特化した編集ツール」を活用することで解決が可能です。今回は、多くの製造現場で活用されているtebikiを使用し、SOPの作成工数を1/3まで大幅に削減した児玉化学工業株式会社の事例をご紹介します。
▼tebiki活用事例:児玉化学工業株式会社▼
児玉化学工業株式会社では、tebikiを用いてSOPを動画で作成することにより、SOP作成にかかる時間が従来の1/3程度に短縮されました。また、従来のSOPでは作業者が誤解しやすいとされた部分も、動画による説明によって明確になり、手順不遵守による品質不良を9割削減し作業品質の向上につながりました。
SOP作成において動画を活用することで、効率化につながるだけでなく、作業者の理解度や作業品質の向上にもつながることが期待できるでしょう。企業がSOP作成に取り組む際には、ぜひ動画作成の導入を検討してみることをオススメします。
より多くの動画活用事例とサンプルを見たい方は、【業界別26社】動画マニュアルの事例とサンプルを多数ご紹介!参考ポイントや作り方も解説をご覧いただくか、活用例を1冊にギュッと凝縮した以下の動画マニュアル「tebiki」活用事例集をご覧ください。
アンケート調査から見る【SOP作成~運用の課題】
ここまでご覧いただいた方の中には、既にSOPを作成し運用している方がいらっしゃるのではないでしょうか。既に活用している方の中には『SOPは重要だが、更新がされず現場で形骸化している…』という方もいらっしゃると思います。
私たちが運営するWebメディア「現場改善ラボ」で、製造業に従事する318名の会員の方へ【作業手順書の形骸化に関する実態調査】を行ったところ、手順書が重要であるにも関わらず活用できていない実態が明らかになりました。
▼作業手順書はどの程度重要だと考えますか?▼
▼作業手順書が形骸化していると感じたことはありますか?▼
上記の結果から分かるように、96%の方が手順書は「重要」「やや重要」と考える一方で、90%の方の現場で「形骸化」していることから、SOPのような手順書を効果的に活用しきれていない現状が伺えます。
ではなぜ手順書が形骸化してしまっているのでしょうか?その背景として、以下の内容が挙げられています。
- 作業手順書を更新する時間がない:172件
- 作業手順書が現場の実態と合っていない:136件
- 作業手順書が分かりづらい:113件
- 作業手順書を守るという風土がない:111件
- 作業手順書の管理が難しい:108件
- 上層部や経営者が作業手順書の重要性を理解していない:67件
- 作業者が作業手順書の存在を知らない:29件
これらの中でも特に選択されているものが、SOPを現場で活用する際に課題となりやすいボトルネックと考えられます。作成時点からこれらのボトルネックを意識して作成することで、形骸化しないSOPを活用でき効果を教授することができるでしょう。
そもそも「作業標準」とは?トヨタの考えをチェック
SOP(標準作業手順書)の理解を深めるためには、そもそも「標準作業」とは何かを知る必要があります。まずはトヨタ生産方式についてご紹介します。
トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車が製造工程のあらゆる「ムダ」を排除し、高品質で低価格な自動車を製造するために確立した生産方式のことです。
トヨタ生産方式におけるムダには、手持ちのムダや動作のムダ、不良をつくるムダなど、さまざまな視点(7つのムダ)があります。これらのムダを徹底的に排除し、生産効率を最大化させるために人・モノ・機械の動きを効果的に組み合わせたものを標準作業と定義しています。(参考:大野 耐一著「トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして」)
つまりSOPは、作業者に効率的な標準作業を浸透させるために活用する手順書といえます。そのため、SOP作成時はただ手順を落とし込むのではなく「生産性が高い手順を分かりやすく伝えられるか」という視点がとても重要になります。
まとめ
SOPとは標準作業手順書(Standard Operating Procedures)のことで、業務の手順を統一化して作業結果や品質のばらつきを防ぐためのマニュアルです。作業手順を文章やフローチャートなどで詳細に示し、正しい手順を従業員に徹底させることが目的です。
<SOP作成のメリット>
- 業務プロセスの効率化
- 業務品質の向上
- 新人教育の効率化
<SOP作成のポイント>
- 現場の実態を反映した標準を設定
- わかりやすい言葉で手順を記載
- 動画を活用して視覚的に伝える
- 定期的に内容を更新
動画によるSOP作成は作業効率を高め、業務負荷を減らし、作業品質を高めることが可能です。「tebiki」では、SOPを作成する際、作業内容をスマートフォンやタブレットで撮影し、tebikiのクラウドに保管可能です。また、音声認識システムにより動画撮影時の音声が自動的に字幕になるので、動画編集知識がない人でも簡単に動画を作成できます。
動画マニュアル作成ツール「tebiki」に関する詳しい機能は、以下より概要をまとめた資料をご覧ください。
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