更新日:2024年3月5日
部署異動、転勤、退職といったシーンで必要となるのが、業務の引き継ぎです。業務のスムーズな引き継ぎは、事業の継続性を担保し、業務品質を保つために欠かせません。スムーズに業務の引き継ぎを行うためは、引き継ぎマニュアルが欠かせません。
今回の記事では、現場で役立つ引き継ぎマニュアルの作り方や、実際のテンプレートを紹介します。分かりやすく実際に使える引き継ぎマニュアルを作成するためのコツを掲載していますので、参考にしてください。
また最近では引き継ぎマニュアル作成において、作りやすさ/わかりやすさの観点から動画を用いて整備されるケースもあります。そんな動画マニュアルの基礎的な知識やノウハウを、以下の『はじめての動画マニュアル作成ガイド』に凝縮していますので、併せてご活用ください。
1.引き継ぎマニュアルとは?
引き継ぎマニュアルとは、業務の詳細な手順や注意点、チェックポイントを具体的にまとめた文書を指します。業務を進める際の基準を明確にし、誰でも業務をスムーズに進められるようにすることを目的としています。
業務の引き継ぎは、部署異動、転勤、退職、昇進などのさまざまなシチュエーションで必要になります。口頭だけの引き継ぎでは、情報の伝え漏れや誤解が生じる恐れがあるため引き継ぎマニュアルが役立ちます。
引き継ぎマニュアルには、前任者から後任者に向けて業務の説明や進捗状況が記載されます。一方で、業務マニュアルには、業務の流れや手順が詳しく説明されていますが、特定の未処理事項や懸念事項は含まれていないことが多い点には注意が必要です。
業務マニュアルが既に存在する場合、引き継ぎマニュアルを作成し、重要な未処理事項や懸念事項を中心に記載すれば、効率よく引き継ぎを行えます。業務マニュアルがない場合は、業務の進め方や手順を含めた引き継ぎマニュアルを作成する必要があります。
引き継ぎマニュアルは、業務の質や成果を維持し向上させるために重要なツールです。適切なマニュアルを作成することで、後任者も前任者と同等の業務品質を維持し、スムーズに業務の引き継ぎを行えるようになります。
マニュアルには引き継ぎ用途以外にも、教育マニュアルや作業手順書などマニュアルにはさまざまな種類があります。それぞれの種類と意味の違いは、以下の記事で解説しているので併せてご覧ください。
▼関連記事▼
マニュアルとは:「作業手順書」「SOP」等の類語との意味の違いや英語の呼び方など
2.業務の引き継ぎマニュアルが必要な理由は?
人手不足や人材の流動化が進行しており、社員の転職・退職・異動が増加しています。そのため、転職や退職の際に引き継ぎ期間を十分に確保できないケースが増えています。
このような状況では、業務の引き継ぎマニュアルがなければ適切に引き継ぎを行うことが難しいため、新しい担当者が業務をスムーズに進めることができません。その結果として、業務の停滞や生産性の低下といった悪影響が出る可能性があります。
また、業務の引き継ぎマニュアルに記載されている手順が不明確な場合、業務品質が低下する点にも注意が必要です。新しい担当者が必要な知識やノウハウを習得できなければ、ミスが増加し業務に支障が出るリスクが高まります。
これらの問題を解決するためには、必要な内容を過不足なく記載した業務の引き継ぎマニュアルを作成することが重要です。マニュアルには業務の詳細やノウハウを詳しく記載することで、新しい担当者がすばやくスムーズに業務を継続できる体制を整えることができます。
3.【ステップ別に解説】引継書やマニュアルの作成手順
業務をスムーズに引き継ぎ前任者と同等の業務品質を担保するためには、引継書やマニュアルを作成したうえで引き継ぎを行うことが重要です。ここでは、引継書や業務マニュアルの作成手順を説明します。
具体的な引継ぎマニュアルの作成手順は以下の流れです。
- 引き継ぎをするスケジュールを決める
- 引き継ぐ業務の概要や手順を洗い出す
- 引継書/引き継ぎマニュアルを実際に作成する
- マニュアルを使いながら後任者へ教える
- 抜け漏れや改善点があればマニュアルを修正する
マニュアルの作り方について、流れやコツ、ツールについて網羅的に知りたいという方は、より詳細に解説している以下の記事をご覧ください。
▼関連記事▼
マニュアル作成『基本のき』5つのコツや手順、作成例やアプリ・ツールを徹底解説!
引き継ぎをするスケジュールを決める
引継ぎを期日までに完了させるには、業務説明、関係者との挨拶など、それぞれの行動に必要な時間を考慮しスケジュールを決めることが大切です。
引き継ぎに関わる他部署や人々との日程調整を行い、後任者の他の引き継ぎスケジュールも考慮する必要があります。特に注意が必要な業務がある場合は、それに合わせて時間を配分することで、引き継ぎを効率的にスムーズに行うことができます。
引き継ぐ業務の概要や手順を洗い出す
引き継ぎを行う前に、業務の内容や手順の明確化が必要です。
まず、現行の業務マニュアルや過去の資料を確認し、業務の全体像を整理します。次に、業務の流れ、使用するツール、関連部署、業務上の注意点やノウハウを詳しく洗い出します。業務を行う上で重要なポイントや問題点をまとめ、後任者が理解しやすいように整理することが重要です。
また、同僚や上司と洗い出した業務内容を共有し、内容に問題がないか必ず確認しましょう。
引継書/引き継ぎマニュアルを実際に作成する
見える化した業務の内容や手順をもとに、具体的な作業工程、使用するツール、関連部署との連携方法などを、引継書や引き継ぎマニュアルに明確に記載します。
すでに業務マニュアルがある場合、内容を重複して記載するのは避け、業務マニュアルには載っていない特有のノウハウや注意点を中心に記載します。後任者が業務を進める上で必要となるデータの場所や、ツールの使い方なども詳しく記載することをおすすめします。
資料の完成後に同僚や上司に内容を確認してもらい、内容の誤りや漏れがないか忘れずにチェックしてもらいましょう。
マニュアルを使いながら後任者へ教える
作成した引き継ぎマニュアルを使いながら、後任者に業務の流れや手順を説明します。マニュアルを用いて説明しながら、具体的な業務のコツや注意点を口頭で補足します。マニュアルだけでは伝わりにくい実務のコツやノウハウも共有することで、引き継ぐ業務の理解を深めることができます。
さらに、実際の業務を行う際には、マニュアルを参照しつつ実践的な指導を行い、後任者が業務を問題なく遂行できるようサポートすることが重要です。
抜け漏れや改善点があればマニュアルを修正する
後任者に業務を教える過程で、引き継ぎマニュアルの内容に不足や誤りがあると気づく場合があります。このようなケースでは、後任者からの質問や反応を参考にしてマニュアルを見直し、適切に修正や追記を行います。
後任者が引継ぎ後にすぐ業務に入れる体制を整えるため、そして将来の引き継ぎで同じ問題を防ぐために重要な作業です。マニュアル作成後に内容の見直しは必ず行いましょう。
4.引き継ぎマニュアルに必要な項目例
引き継ぎマニュアルは、業務のスムーズな引き継ぎを行うために重要なツールです。引き継ぎマニュアルを作成する際は、以下の項目を漏れなく記載することが必要です。
- 業務の目的
- 業務の発生頻度やスケジュール
- 業務に関わる人
- 業務の流れ
- トラブル時の対応方法
- 関連情報や資料の保存先
業務の目的
業務の目的を明確に記載することで後任者は業務の意義や重要性を理解し、モチベーションを高く保った状態で業務に取り組むことができます。業務の背景や、達成したい目標、社内での業務の位置付けなどを具体的に記述します。
業務の発生頻度やスケジュール
年間、月間、週間の業務スケジュールを明記することで、後任者は業務を行うタイミングや周期を把握しやすくなります。業務スケジュールの検討や優先順位の設定を行いやすくなるというメリットもあります。
業務に関わる人
関連部署や担当者、取引先の情報など、業務を行う上で関わる人々の情報をリストアップします。必要な時にすぐに連絡を取ることができるため、業務の効率化が図れます。
業務の流れ
業務の具体的な手順やフローを詳細に記載します。日常の業務だけでなく、事前の準備や作業後の処理など、業務の全体像を把握するための情報も含めることが重要です。
トラブル時の対応方法
業務中に発生する可能性のあるトラブルや、イレギュラーな事態への対応方法を記述します。過去の事例や解決策、関連部署や担当者の連絡先など、トラブル対応に必要な情報を漏れなくまとめます。
関連情報や資料の保存先
業務に関連する資料や情報の保存場所を明記します。データの場所や資料の取り扱い方法、前任者の連絡先など、後任者が必要とする情報の抜けや漏れがないように記載します。
5.引継書/引き継ぎマニュアル作成に活用できるテンプレート
引継書の作成は、業務のスムーズな引き継ぎのために重要です。しかし、ゼロから作成する場合は、非常に時間や手間がかかります。引継書や引き継ぎマニュアルを作成する際に役立つ、テンプレートが掲載されているサイトを紹介します。
Microsoft 引き継ぎ書(Word)
引継ぎの際、効率的に情報をまとめるための引継書テンプレートがMicrosoftより提供されています。
このテンプレートを使用すれば、フォーマットに従って必要な情報を入力するだけで、引継書が簡単に完成します。視覚的な情報伝達のための画像挿入欄が設けられている点が特徴で、表の行や列の追加も自由に行える使い勝手の良いテンプレートです。
bizocean 業務引き継ぎシート(エクセル)
引継者が複数名の場合に特に活用できる設計となっており、業務の詳細な内容や手順、注意点などを漏れなくまとめられるテンプレートです。
6.スムーズな引き継ぎには「分かりやすさ」が大切
業務の引き継ぎは、組織の成長と持続性を維持するために必要不可欠なものです。ただし、引き継ぎマニュアルを作成したとしても、内容がわかりにくいものであれば期待通りの効果は得られません。
マニュアル作成の目的は、単に文書を作ることではなく、後任者に業務の内容や手順をわかりやすく伝えることです。決して引き継ぎマニュアルを作成することが目的にならないように注意してください。
分かりやすい引き継ぎマニュアルには、さまざまなメリットがあります。まず、引き継ぎ期間の短縮がメリットとして挙げられます。マニュアルの内容が分かりやすいため、後任者は業務内容をすばやく理解し、自立するまでの時間を大きく短縮できます。
また、誰にとっても分かりやすいマニュアルがあれば、業務の属人化を避けることができる点も大きなメリットです。
7.分かりやすい引き継ぎマニュアルを作成するポイント
引き継ぎマニュアルは、後任者に業務を円滑に引き継ぐために欠かせない資料です。そのため、誰が読んでも明確で分かりやすい内容であることが重要です。
分かりやすい引き継ぎマニュアルを作成するためのポイントを解説しますが、より詳細に知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
▼関連記事▼
伝わるマニュアルの作り方:すぐに実践できる4つのポイント
初心者でも分かるように専門用語を使わない
業務特有の専門用語や略語は、慣れていない人にとっては「分かりにくい」と感じやすいので、避けるようにしましょう。
引き継ぎマニュアルでは、一般的な言葉を使用して説明することをおすすめします。もし専門用語を用いなければならない場合は、専門用語の定義や参考となる情報を、初めて見た人にでもわかるように記載する必要があります。
文字だけで説明しない
文字のみの説明では、業務内容を具体的にイメージしにくい場合があります。業務の流れや複雑な手順を伝える際は、写真、図、フローチャートなどの視覚的要素を活用すると、後任者が業務内容を理解しやすくなります。
例えば、特定の機器の使用方法を説明する場合、機器の写真を添付して操作手順を説明すれば、後任者は迷わずに操作できるようになります。また、業務の手順を示す際は、フローチャートを用いて一目で業務の全体像を把握できるようにしましょう。
このように分かりやすいマニュアルを作ることで、内容がしっかりと伝わるマニュアルとなります。
8.誰でもかんたんに引き継ぎマニュアルを作成できる「tebiki」とは?
tebikiは引き継ぎのように、教育を目的としたマニュアル/手順書作成を動画で誰でも簡単に行うことができるツールです。
製造業、物流業、食品業、小売業、飲食業などの現場では、業務ノウハウである「人・モノ・機械の動き」を可視化し、分かりやすい引き継ぎマニュアルを作ることが重要です。
分かりやすい動画を作成するために、動画を用いて引き継ぎマニュアルを作成すると効果的です。tebikiは、画像や文字だけでは伝わりにくいカンやコツを動画で可視化しデータを蓄積することで、引き継ぎの効率化や業務の標準化、ノウハウの伝承に役立ちます。
詳しいサービスの紹介は、以下の『3分でわかるtebikiサービス資料』をご覧ください。