2025.4.24 品質, 生産効率, お役立ち情報

業務の見える化とは?目的やメリットと実現ツール・事例紹介

tebikiサポートチーム
執筆者:tebikiサポートチーム

製造/物流/サービス/小売業など、数々の現場で動画教育システムを導入してきたノウハウをご提供します。

かんたん動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を展開するtebikiサポートチームです。

多くの企業が、業務の属人化、非効率なプロセス、ブラックボックス化といった課題に直面していますが、こうした根深い課題を解消するためには「業務の見える化」が不可欠になっています。

本記事では、数多くの企業の現場教育や業務改善をご支援してきた弊社の実践的な知見に基づき、「業務の見える化」とは何か、その本質的な目的から具体的な取組事項まで解説します。

目次

業務の見える化とは?その本質的な目的

「業務の見える化」とは、社内業務のプロセスや内容、担当者、時間などを客観的に把握し、分析・改善できる状態にすることを指します。しかし、それは単なる現状把握に留まらず、その先にある組織としての「あるべき姿」を実現するための戦略的な手段です。

見える化を通じて、企業は以下のような本質的な目的の達成を目指します。

継続的な業務改善サイクルの確立 現状の業務プロセスを定量・定性的に把握し、課題を特定、改善策を実行、効果を測定するというPDCAサイクルを組織文化として定着させ、常に業務が最適化され続ける状態を目指します。これは、変化に強い組織の基盤となります。
組織知の最大活用と持続的な成長 個人の経験や勘といった暗黙知を形式知化し、組織全体で共有・活用することで、特定の個人に依存しない、組織全体の能力向上を図ります。これにより、技術・ノウハウの着実な継承を実現し、企業の持続的な成長を支えます。
データドリブンな意思決定文化の醸成 勘や経験だけに頼るのではなく、業務に関する客観的なデータに基づいて判断・意思決定を行う文化を組織全体に浸透させます。これにより、迅速かつ的確な経営判断を可能にし、市場の変化への対応力を高めます。
従業員のエンゲージメント向上と働きがいのある環境創出 非効率な業務や不明瞭なプロセス、業務負荷の偏りを解消することで、従業員が本来の能力を発揮し、主体的に業務に取り組める環境を整えます。これにより、従業員の満足度とエンゲージメントを高め、創造性や生産性の向上につなげます。
変化に強く、しなやかな組織体制の構築 業務プロセスやリソース配分を柔軟に見直せる体制を構築することで、市場環境の変化、技術革新、顧客ニーズの多様化などに迅速かつ効果的に対応できる、しなやかで競争力のある組織を目指します。


これらは業務の見える化によって実現したい最終的な姿ですが、そこに至るまでの経緯に着目すると、いくつかのメリットが見えてきます。以下で引き続き解説します。

業務の見える化によって得られるメリット・効果

上記の目的(将来像)を目指す過程で、業務の見える化は、まず現場が抱える具体的な"困りごと"を解決し、直接的な効果ももたらします。主なメリットは以下の通りです。

 

属人化による業務停止リスクの低減

特定の担当者しか業務内容や手順を把握していない「属人化」は、その担当者が不在になった際に業務が滞ってしまうリスクを常に抱えています。

例えば、冷凍食品の製造等を手掛ける「テーブルマーク株式会社」は、業務の見える化によって、属人化業務の教育コストが大幅に削減されています。以前は属人化業務の教育にどうしても手間がかかり、本来の業務時間が圧迫されていました。

属人化してしまっていた業務をOJTだけで伝えるとなると、「OJTを2回した後に、さらにその質問対応に2回ぐらい答えないといけない」という状態が発生していて、合計すると5~6時間ぐらいの教育工数がかかっていました。


※同社の詳細な課題と、そこから改善に向かった事例については以下の記事で紹介しています。

▼インタビュー記事▼
属人化業務の指導工数を83%削減! 標準化教育により安心安全な食品を提供


業務を見える化し、手順を標準化することで、担当者が急に休んだり、異動・退職したりした場合でも、他の人が比較的スムーズに業務を引き継ぐことが可能になります。「あの人がいないと仕事が止まる」という状況を回避し、事業の継続性を高めることは、企業にとって非常に重要なメリットです。

教育・引き継ぎコストの削減と早期戦力化

業務フローや手順が明確になっていない仕事は、新人や異動者への教育、担当変更時の引き継ぎに多くの時間と手間を要します。業務を見える化し、標準化された分かりやすいマニュアルが整備されていれば、教育・引き継ぎにかかるコスト(時間、労力)を大幅に削減できます。

教える側の負担が軽減されるだけでなく、教わる側も自分のペースで効率的に学習を進められるため、より短期間で業務を習得し、戦力として活躍できるようになります。

例えば、人材紹介サービスの株式会社GEEKLYでは、OJT中心だった新人教育を動画マニュアルに置き換えたことで、年間3,700時間もの教育工数を削減されました。これは、トレーナーが自身のコア業務に集中できる時間を生み出し、結果的に営業成績の向上にも貢献しています。

(以前は)新人が入社したら、同じチームの先輩がマンツーマンで教えるOJTが基本でした。そのため、トレーナーとなる先輩社員は自身の営業活動を一時的にセーブする必要があり、組織全体で見ると大きな機会損失が発生していたのです。


※同社の詳細な課題と、そこから改善に向かった事例については以下の記事で紹介しています。

▼インタビュー記事▼
年間の新人教育時間を3,700時間削減。トレーナーの教育時間が大幅に減り営業成績も向上!

 

非効率な業務の発見と改善

日々の業務に追われていると、「昔からこうやっているから」「前の担当者からこう教わったから」といった理由で、非効率な作業がそのままになっていることがよくあります。

そこで業務を見える化し、プロセス全体を客観的に見直すことで、「この作業は本当に必要なのか?」「もっと簡単な方法はないか?」といった改善の視点が生まれます。 これにより、本来不要な工程や重複している作業を発見し、排除することができます。

また、業務の流れの中でどこがボトルネック(滞りの原因)になっているかを特定し、集中的に改善策を講じることで、プロセス全体のスピードアップと効率化を図ることが可能です。

業務負荷の可視化と適正化

「あの部署はいつも忙しそうだけど、うちの部署は比較的余裕がある」「特定の人にばかり仕事が集中している気がする」といった感覚は、多くの職場で聞かれます。

業務の見える化によって、「誰が」「どの業務に」「どれくらいの時間を使っているのか」を客観的なデータとして把握できるようになります。 これにより、部署間や個人間での業務負荷の偏りを正確に把握し、それに基づいて業務分担を見直したり、人員配置を調整したりすることが可能になります。

これは、従業員の不公平感を解消し、モチベーションを維持する上でも重要です。

客観的データに基づく現状把握

これまでは担当者の感覚や経験に頼っていた業務量、作業時間、ミスの発生頻度などを、客観的なデータとして捉えることができるようになります。これにより、現状を正確に把握し、課題を具体的に特定することが可能になります。

経営層や管理職は、この客観的なデータに基づいて、より的確な状況判断や課題設定、改善目標の設定を行うことができます。

業務の見える化の進め方や実施方法

それでは、実際に業務の見える化を進めるには、どのような手順で取り組めばよいのでしょうか。ここでは、基本的な5つのステップに分けて解説します。

Step1: 対象業務の選定と目的の明確化

まず、「この見える化によって何を達成したいのか」という具体的な目的(KPIを設定できると尚良い)を明確にし、どの業務範囲を対象とするかを決定します。目的が曖昧なまま進めると、途中で方向性を見失ったり、効果測定ができなかったりする可能性があります。

「特定の部署の残業時間を20%削減する」「製品Aの製造リードタイムを3日短縮する」など、できるだけ具体的に設定しましょう。対象業務は、課題が大きいと思われる業務や、改善効果が高いと見込まれる業務から着手するのがおすすめです。

Step2: 業務内容の洗い出し・情報収集

次に、対象業務に関わる具体的な作業内容や手順、担当者、所要時間、使用しているツールやシステムなどの情報を収集します。主な情報収集の方法としては、以下のようなものがあります。

担当者へのヒアリング
実際に業務を行っている担当者に、具体的な作業内容や流れ、困っていることなどを詳しく聞きます。先入観を持たずに丁寧に聞くことが重要です。
既存資料の確認
既存の業務マニュアル、手順書、日報、システムログなどを確認し、情報を整理します。
業務観察
担当者が実際に作業している様子を観察し、手順や所要時間を記録します。可能であれば動画で撮影すると、後で見返す際に役立ちます。
ワークショップ
関係者を集めて、付箋などを使って業務の流れや課題についてディスカッションします。


ここでは、できるだけ詳細なレベル(タスクレベル)で情報を洗い出すことがポイントです。思い込みや「こうあるべき」という理想ではなく、客観的な事実を集めるように心がけましょう。

Step3: 業務プロセスの図式化・可視化

洗い出した情報を整理し、「見える」形に落とし込みます。代表的な可視化の手法としては、以下のようなものがあります。

マニュアルの整備

まず一番手軽に始められるのが、既存の業務手順を文書や図でマニュアルとしてまとめることです。作業の基本的な流れや注意点を書き出すだけでも、現状把握の第一歩となります。

業務フロー図

業務の開始から終了までの一連の流れを、記号(JISフローチャート記号など)を使って図式化したものです。誰が、いつ、何をするのか、プロセスの分岐や判断基準などを視覚的に表現できます。プロセス間のつながりやボトルネックを把握するのに有効です。

業務分担表(機能相関図)

縦軸に業務、横軸に部門や担当者を配置し、誰がどの業務を担当しているかをマトリクス形式で一覧にしたものです。業務の重複や抜け漏れ、担当の偏りなどを把握するのに役立ちます。

スキルマップ

縦軸に従業員名、横軸に業務やスキル項目を配置し、誰がどのスキルをどの程度保有しているかを一覧にしたものです。人材育成計画や適材適所の配置、技術伝承の必要性を検討する際に活用できます。


どの手法を用いるかは、見える化の目的や対象業務に合わせて選択します。図式化する際は、誰が見ても理解できるよう、使用する記号や表現ルールを組織内で統一することが重要です。

Step4: 分析と課題特定

可視化された業務プロセスをもとに、現状の課題を特定します。「Step1」で設定した目的に照らし合わせながら、以下のような観点で分析を進めましょう。

  • ボトルネックはあるか?
  • 無駄・非効率な業務はないか?
  • 属人化していないか?
  • リスク(コンプライアンスや情報セキュリティ等)はないか?


分析にあたっては、作業時間、処理件数、エラー発生率などの定量的なデータと、担当者からのヒアリングで得られた定性的な情報(「この作業はやりにくい」「ここは時間がかかる」「この手順は分かりにくい」など)の両方を活用することが、より本質的な課題発見につながります。

Step5: 改善策の検討と実行

「Step4」で業務の見える化はある程度なされることになりますが、重要なのは見える化ではなく、見える化によって導かれる「改善策」です。改善策が実施できてはじめて、見える化の恩恵を受けることができます。

したがって、特定された課題に対して、具体的な改善策を検討し、実行計画を立てましょう。例えば、「業務量に対して部署のリソースが足りていない」問題を可視化できた場合には、人員配置の再計画を実施する、というような流れです。

複数の改善策候補がある場合は、効果の大きさ、実行のしやすさ(期間、コスト、関係者の合意形成など)を考慮して優先順位をつけ、具体的な実行スケジュール、担当者、効果測定の方法を明確にした計画を策定します。

業務の見える化と改善に役立つツール・手法

業務の見える化や、その後の改善プロセスを進めるには、適切なツールや手法を活用することが有効です。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。

動画マニュアル作成・共有ツール

特に、デスクワークだけでは完結しない、現場での作業や複雑な手順が伴う業務の「見える化」においては、動画マニュアルが非常に効果的です。

文章や図だけでは伝えきれない実際の動き、作業のスピード感、微妙な力加減やコツ(カンコツ)などを、視覚と聴覚を通じて、誰にでも分かりやすく、誤解なく伝えられるなど、動画マニュアルのメリットは業務見える化に適しています。ゆえに、OJTの時間短縮、教育品質の均一化、技術伝承、安全教育など、幅広い用途で活用できます。

動画マニュアルの例として、児玉化学工業株式会社が実際に撮影・編集を手掛けた作業手順書の動画マニュアルを以下に紹介します。

▼ヤスリでバリをとる動画マニュアル(音量にご注意ください)▼


上記動画は、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」を使用しており、約10分で作成されています。

他にも、どんな動画マニュアルがどのような業務で使われているのか、具体的なサンプルを見てみたい方は、「実際に業務で使われている動画マニュアルのサンプル集(pdf)」が役立ちます。様々な現場の動画サンプルがまとめられており、自社での活用イメージを膨らませるのに最適です。

下のリンクをクリックして、ダウンロードしてみてください。

>>>実際に業務で使われている動画マニュアルのサンプル集を見てみる


もしこれから動画マニュアル作成を始めたいと考えている方には、「はじめての動画マニュアル作成ガイド(pdf)」も参考にしてみてください。作成のステップや導入のポイントを分かりやすく解説しています。下の画像をクリックして、ダウンロードしてみてください。

 

業務フロー図作成ツール

業務プロセス全体を視覚的に表現するためのツールです。専用ツールを使うことで、統一された記号を用いて、誰にでも理解しやすいフロー図を効率的に作成できます。プロセス間の関係性やボトルネックを把握するのに役立つでしょう。

クラウドベースのツールなら、複数人での共同編集や共有も容易です。

代表的なツール例: Draw.io (diagrams.net), Cacoo, Lucidchart, Microsoft Visio など

タスク管理・プロジェクト管理ツール

個々のタスクの担当者、期限、進捗状況などを一覧で管理・共有できるツールです。チーム全体の業務状況や負荷状況を可視化し、作業の遅延や抜け漏れを防ぐのに役立ちます。

見える化プロジェクト自体の進捗管理にも活用できますし、日常業務の進捗を見える化するのにも有効です。

代表的なツール例: Asana, Trello, Backlog, Notion, Microsoft Planner など

業務の見える化による現場改善の事例

業務の見える化は、それ自体がゴールではありません。見える化を通じて課題を発見し、具体的な改善アクションにつなげてこそ、真の価値が生まれます。ここでは、業務の見える化を起点として、現場の課題解決や生産性向上を実現した企業の事例をご紹介します。

【製造業】属人化していたカンコツ作業を見える化し、技術伝承と品質安定を実現

製造現場では、長年の経験を持つベテラン従業員の「カンコツ」に頼る作業が多く存在し、その技術を若手に伝えることが難しいという課題がありました。人によって作業のやり方や品質にばらつきがあり、担当者が不在になると業務が滞るリスクも抱えていました。

これはまさに大同工業株式会社が直面していた「我流化(属人化)」の問題です。同社は、言葉では伝えきれない細かな手の動きや注意すべきポイントを映像で「見える化」し、作業手順を標準化しました。

※同社の詳細な課題と、そこから改善に向かった事例については以下の記事で紹介しています。

▼インタビュー記事▼
製造業の技術部門の業務を動画で標準化。 教育工数を8割削減し、業務の効率化・最適化も実現。


製造業における動画マニュアルの活用事例をもっと知りたい方は、「製造業における動画マニュアル活用事例集(pdf)」をぜひご覧ください。様々な現場での具体的な改善効果が紹介されています。下の画像をクリックして、ダウンロードしてみてください。

【小売・飲食業】新人教育プロセスを見える化し、教育時間の大幅削減と即戦力化を達成

飲食店やスーパーといった小売業では、教育の課題が山積みになっています。特に新人教育の難易度は高く、レジ操作、接客応対、商品陳列、調理手順など、店舗運営に関わる様々な業務について学ばなければなりません。

こうした多岐にわたる業務を可視化し、教育工数を大幅に削減したのが、スーパーマーケットを展開する株式会社Olympicです。同社は、あらゆる業務手順を動画マニュアルとして「見える化」し、新人スタッフの1人前までの期間短縮に成功しています。OJTの教育工数も減り、教育の効率化にもつながりました。

※同社の詳細な課題と、そこから改善に向かった事例については以下の記事で紹介しています。

インタビュー記事▼
違いはOJTの回数です。 動画で復習できるようになってものすごく効率化しました。

 

【IT】ブラックボックス化した業務を見える化し、改善サイクルを確立

あるIT企業では、特定の基幹システムの運用や特殊な顧客対応など、長年特定のベテラン担当者数名だけが行っている「ブラックボックス化した業務」が存在していました。手順書は古く、更新されておらず、担当者以外は誰もその業務の全体像や詳細な手順を把握できていませんでした。

そのため、業務改善が進まず、担当者が不在の際には業務が滞るリスクも抱えていたのです。

そこで同社では、まず担当者への丁寧なヒアリングと実際の業務観察を通じて、ブラックボックス化していた業務プロセス全体を洗い出し、業務フロー図を活用して「見える化」しました。これにより、担当者以外でも業務内容を理解できる状態になりました。

次に、見える化されたプロセスをもとに、どこに非効率な点や改善の余地があるかを関係者で議論し、具体的な改善策(例:システム入力手順の簡略化、ツールの導入、チェックリストの作成など)を立案・実行しました。

この取り組みにより、これまで聖域化していた業務がオープンになり、客観的な視点での改善を進めています。見える化された手順書があることで、他のメンバーもその業務を代替できるようになり、属人化リスクが解消されました。

まとめ:業務の見える化を第一歩に、継続的な改善サイクルを回そう

業務の見える化は、単に現状を把握するだけでなく、組織として目指す姿を実現するための戦略的な活動です。重要なのは、見える化を一度きりのイベントで終わらせず、継続的な改善活動の出発点とすることです。

見える化によって明らかになった課題に対し、プロセスの見直しやツールの導入、そして分かりやすいマニュアルの整備といった具体的なアクションを起こし、その効果を測定し、さらに改善を重ねていく。このPDCAサイクルを回し続ける文化を組織に根付かせることこそが、企業の持続的な成長には不可欠です。

特に現場業務の見える化とその先の改善、現場教育の効率化を支援するツールに関心をお持ちの方は、動画マニュアル作成ツール「tebiki現場教育」のサービス資料「3分で分かる『tebikiサービス資料』(pdf)」をご覧ください。業務の見える化に動画マニュアルが有効手段1つである理由や、活用イメージが理解できるようになっています。

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